高知県の地鶏「土佐ジロー」専門店

はたやま夢楽
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奥山に生きる 1

今月から連載を始めました。

畑山に来てから15年が経過。
日々の暮らしを書くことが好きで
新聞や雑誌で、連載をさせてもらいました。

たくさん書いて連載の終盤は
もうしばらく書かなくても良いなぁ…
と思うほどに書き足りました。

連載がなくなり、数年。

日常が変わらず楽しく、
畑山だからできる経験もたくさん。

書きたい欲が沸き上がっています。

ただ、ひとりで書き飛ばすのではなく、
きちんと書きたい、と
元上司に編集をお願いしました。

私自身、この方の書く文章が大好きでした。

2025年6月から毎月1回発行予定です。

はたやま夢楽だよりや、ご来店時
商品のお届け時に同送したいと思っています。

ご高覧いただければ幸いです。

奥山に生きる~自然とともに、あるがままに~ 1

梅雨を迎え、水かさの増した安芸川。
深くなった渕は青さを増し
浅瀬は高い透明度のままに流れゆく。
川の流れを横目に車で上流域を目指す。
新緑はもりもりと茂り、目に心地よい。
市街地を離れ、渓谷沿いの道をおよそ四十分。
急に山が開ける。
丘の上に、赤い屋根の小さな一軒家。
それが、私たちの営む「ジローのおうち」だ。
高知県安芸市畑山、人口わずか二十人。
そんな山あいの地に、全国各地から、時に海外からもお客さんが訪れる。

「この風景の中で過ごす時間が至福です」
「世界中を旅しているけれど、こんな星空を見たのは初めて」

私たちが暮らす里の風景を、
好きだと共感してくれる人が増えている。
私たちが愛する土地が、
「限界集落」として、
ただ消滅を迎えるのを待つのは忍びない。
田舎には田舎の良さがあることを知ってもらいたい。
知ってもらうことは、未来に繋がっていると思うから。
百人に一人でも、この風景や暮らしに共感してくれれば、
私たちの世界は広がってゆく。
そう信じて、宿を営んでいる。

宿のメーンは、私たちが丹精した土佐ジローのお肉料理。
「人生観が変わった」
「今まで食べた鶏肉はなんだったの」。
笑顔になるお客さんの表情を見られることは、
生産者としてこの上ない幸せだ。

土佐ジローは高知県の地鶏で
夫の小松靖一が四十年、人生をかけて育ててきた。
噛めば噛むほど旨みがあふれる地鶏肉。
畑山の澄んだ空気と風と水が織りなす
土佐ジローの味わいを、こう感じ取ってくれた人もいた。

 「風景の味がする」

この言葉に応えるべく、
二〇二二年に建てた宿は、
森の中にいることを実感できるように部屋や窓を配した。

春。
山裾から広がる淡い桜色は、
次第にエネルギーに満ちた新緑に移ろう。
コジュケイやウグイスたちのさえずりが心地よい。
川のせせらぎは絶えることなく、
時折、森をわたる風が木の葉をゆすっている。
新月には自分の手のひらも見えない闇夜が訪れる。
頭上には、あまたの星。流れる星もある。

愛媛での新聞記者を辞めて、限界集落へ。
年の差二十五歳の養鶏家に嫁いできた。
十五年前二十七歳で描いていた夢は、こうだった。
農山漁村に身をおきたい。
自分たちが育てたものを自信を持って提供したい。
語れるものをつくりたい。
自然の中で子育てをしたい。
子どもに誇れる仕事がしたい。
田舎の楽しさを共感してくれるお客さんと繋がりたい…。
描いた夢の多くを今、手にできていると思う。

高校の恩師はこう言った。
「都内の大学に進んだのだから、世界を目指せ」。
高収入を得て、世界を股に掛ける
ビジネスウーマンになることが
最良の選択だと思われていた。
でも、私はそこに幸せな自分を想像できなかった。
誰かの描いた道ではなく、自分が思い描く道を歩む。
それが、高知の奥山にある。

小松圭子

◇こまつ・けいこ◇
(有)はたやま夢楽社長。
高知県安芸市畑山で養鶏業や旅館業を営む。
愛媛県出身、元新聞記者者。
#田舎を楽しめる人と繋がりたい

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