奥山に生きる 7

十一月、ことし一番の大きな満月が空を照らした。
翌朝、畑山では既に沈んでいた月を追うように、
車を市街地へ走らせる。
山の際に出たり、入ったりを繰り返すお月様。
安芸平野では、西の山の上に大きくまん丸く輝いていた。
息を吞む綺麗さだった。
朝イチの飛行機で東京に向かう。幸先が良いと思った。
羽田空港から電車を乗り継いで
外苑前駅で降り、ビル群を歩く。
数時間前に見た風景とは別世界だ。
創設されたばかりの
ふるさと納税「ごちそうアワード2025」の
授賞式に招かれた。
「ふるさと納税を単なる通販ではなく、
産地の想いを伝えて共感の輪を広げるものにしたい」と願って創られたという。
この夏から安芸市のふるさと納税事務が外部委託された。
早速、担当者が土佐ジローを自ら食べに来店。
「締め切りまで数日ですが、アワードに応募しても良いですか?」
あっという間に申請を進めてくれた。
しかし、私の中には、諦めに似た気持ちがあった。
土佐ジローは取り寄せだけでは真価が伝わらないという課題を抱えているからだ。
ことしもこんなことがあった。
「土佐ジローは東京には向かない硬さ。旨みもない」。
商談会で、有名店のバイヤーからばっさり。
その後、ウェブショップで取り寄せた個人客からも
「ぱさついて美味しくなかった」と連絡があった。
今に始まったことではない。
電話嫌いになるくらい、お叱りを受けてきた。
畑山では美味しさが伝わるのに…。
レシピの工夫を重ね、注意書きを増やし、加工品開発にも注力してきた。
エントリーに選んでくれたのは、
希少部位のトサカや白子も含む肝類と、正肉、カット肉のセット。
奇抜さはあるけれど、美味しさが伝わるか不安だった。
写真選考は通っても、試食のある次は通らないだろう、と思った。
私の予想は大きく外れた。結果は、総合部門で準大賞。
肉部門では金賞を得たのだ。授賞式に参加してさらに驚いた。
「最初に見た時に、これこそふるさと納税にふさわしいと思いました」。
会場入りすると、スタッフが温かく迎えてくれた。
掲載ページだけでなく、
調理法のYouTubeもじっくり見てくれたそうだ。
畑山流に忠実に料理をしてくれたのだろう。
地域の魅力を伝えたいというひたむきさを感じた。
おかげさまで審査員にも美味しさが伝わった。
畑山流に忠実に料理をしてくれたのだろう。
地域の魅力を伝えたいというひたむきさを感じた。
うしろ髪を引かれながら、
夕方、高知へ舞い戻る。
繁忙期につき、日帰りの東京行きだった。
畑山では十六夜がふんわりと迎えてくれた。
また、ここで頑張っていこう、と月を見上げた。








