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はたやま創作資料館の取り組み

小松靖一

 私たちの住む安芸市畑山地区は、市街地から約20㎞山の中に入ったところにあり、昭和の市町村合併以前は林業が盛んで、旧畑山村の中では「ほんそん」と呼ばれる中心的な役割を持つ地域でした。昭和30年ごろには、700人くらいの人が住み、周辺に分校もある学校としてずいぶん、にぎやかだったところです。

 しかし、日本の戦後復興の勢いから高度経済成長へと、およそ50年の歳月の中で、全国的に流行りごとのように過疎化現象が起き、畑山も当時の10の1くらいに人口が減り、さらに年々高齢化が進み、“限界集落”と呼ばれるようになって久しい状況です。

 それでも地域を何とかしたいとの思いから、公民館活動を中心に文化活動の継承や、人を呼び込むためのイベントなど、活性化に向けての取り組みをしてきました。そんな中、「ごめん・なはり線を支援する会」が中心となる「高知東部地域・活性化作戦会議」という勉強会があり、何度か参加をさせていただきました。その中で、“作戦会議”は「自分たちも畑山を高知県東部の一地域として活性化させたい」「ひとつのモデルケースにしよう」とメンバー全員が畑山に入り、畑山に何があってどんな活用ができるかを検討し、何回かの勉強会の中で、地域への交流人口を増やすために、人の集まる場所として学校施設を活用することが提案されました。

 畑山の学校は、平成8年に廃校になりましたが、すぐに、世界的シンセサイザー奏者である西村直記さんが移住して来られ、「クリエイティブ・シャトルはたやま」(創作する翼)と名付け、廃校になった学校を拠点に、主に童謡の創作などの活動をされていました。ただ、一階部分に地域との共有スペースとしての教室がいくつかありましたから、本を集めてみてはどうかということになりました。資金もないことから、広く善意に働きかけて、たくさんの人との関わりの中で学校施設を活用するということは、面白い考えだと思いました。

 それからは、新聞やテレビに働きかけ、広く本の募集をしました。当初は送料を負担したり、わざわざこんな山奥まで持って来てくれる人はそんなにいないだろうと思っていましたが、予想を大きく上回る数の本が、県内外から毎日のように郵便や宅配で届き、また直接持ってきてくれる人もたくさんおいでて、約5か月くらいの間に、3万冊近い本が集まりました。整理作業や保管場所のことを考えると、正直、そのときは途方に暮れる思いでした。

 それからまた、作戦会議の人たちと相談をして、新たにボランティアの募集をしました。司書さんに学生さん、本に興味のある人、地域に関心のある人。これまた、いろんな人のご協力をいただきながら、何回かの整理作業をしました。地元の高齢者も本を磨いたり、運んだりと、寄り集まるのに良い機会になったと思います。また、レイアウトデザインや展示用家具、本棚の製作には、高知工科大学と高知工業高校の学生さんたちにご協力をいただきました。おかげさまでおしゃれで楽しい空間ができあがりました。

 本の内容も絵本から、専門書、推理小説に伝記や美術書、楽しいまんがに至るまでいろんな分野の本がそろい、また、それぞれの本には思い出や思い入れが強くあることを感じながら、並べさせていただきました。本当にたくさんの人の“想い”が集まったと思います。地域の人間にとって大変ありがたく、貴重な財産ができたと思います。本当にありがとうございました。

 さて、私たちにとって図書館を作ることは、目的ではなく手段だと思っています。これからの新しい畑山を創ってゆくための一つのアイテムとして活用してゆきたいと思います。たとえば、家族で畑山に来てお父さんと子どもは山や川で遊び、お母さんは読書をするような、また、学校施設で絵画教室や俳句教室を開いたり、自然にふれあう体験をすることで新しい自分をみがき育てるような、こんなきれいで静かな環境ならではの活用のあり方を考えながら、地域の総合魅力の底上げをはかってゆきたいと思います。

 図書館の運営は、まだまだ厳しい状況ですが、自然を活かした特産品の開発と、それらを使った美味しい食べ物を提供したり、山や川で遊んでゆっくり休む。そんな物と空間と時間を組み合わせた山の中ならではの新しい産業のかたちが見えてくるのではないでしょうか。そんな話題と季節の移り変わりを上手に情報発信して、人と物の交流が増えれば、おのずと地域は元気になっていくことと思います。


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