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土佐ジローランチ

地鶏の放飼による卵肉生産

2008年2月9日〜11日
平成19年度日本獣医師会 学会年次会  会場:サンポート高松
文責;小松靖一

【はじめに】

現在の世界の養鶏産業の主流は、採卵ならケージの3~4階建て、肉用なら高密度生産が合理的で生産性が高く管理がしやすい事などから世界中でこのような生産様式になっていると思います。私は養鶏産業の予備知識もなく、ただ地域の特産品を作りたい一心で土佐ジローの生産に携わって参りました。


【放し飼いによる採卵への取り組み】

当初、放し飼いといえば広い放飼場で、のんびり遊ぶニワトリのイメージで、100羽の集団に対し300坪くらいのところで飼い始めました。もともと高知県は土佐ジローを採卵用として開発し、420日令で廃鶏として肉の利用をするという考えだったようです。

私の生産様式の場合、あまりに広い遊び場なので、遊びに夢中になって産卵率が上がらず、まったく採算が取れませんでした。産卵に必要な1日のエネルギーが摂れない状況があったと思います。それに加え、自然環境を活かしたつもりが、暑さ寒さの影響をもろに受けるわけで、産卵率が安定せず商売のやりにくい事この上ない状況でした。

ただ、若いころに建築大工をやっていた経験を活かし、鶏舎の建て替えや増改築を繰り返しながら鶏を観察し、人間の都合と鶏の都合の折り合い点みたいなところを探ってきました。土佐ジローならではの生産様式があるはずだと、根拠のない情熱や思い入れだけで動いていたように思います。


【雄鶏の放し飼いに挑戦】

当時は、土佐ジロー卵は複合経営の一作目という位置づけで、地域ならではの特産品として県下各地で生産する方式が主体でした。導入から2年目、採卵鶏のみでの産業展開に限界を感じ始めていた時、思い至ったのが雄鶏の活用です。採卵用として利用される土佐ジローの雌鶏に対し、同時に約55%発生する雄鶏は、鑑別が終わると有精卵を作る為の少しの羽数を残し、その大半が廃棄処分されていました。

これらのことを考え、誰も手を出していない土佐ジロー肉用若鶏の生産を、平成3年から少しずつ始めました。肉用としても基本的には放し飼いですので、採卵用式と同じ広さから始めました。土佐ジローの父親である土佐地鶏は国の天然記念物で、鶏の原種とされる赤色野鶏に一番近いといわれています。土佐ジローは父親の性質を強く受け継ぎ、小型で飛んだり跳ねたりの運動能力が極めて高く、高さで3~4m、距離で40~50mは飛ぶ事のできる鶏です。実際、私の鶏舎近くには、6月に脱走した土佐ジローが川を越えて向こうの山で今も生きています。

ただ、野生に近い種類の野生の都合ばかりを発達させてしまうと、極端な話、卵は繁殖用に春と秋に数個しか生まなくなるのではないか、肉用は外敵から身を守るために腹八分目しかエサを食べず、筋肉は発達して堅くなり過ぎて、おいしく太ってくれないという事になり、人間の都合である生産性とは、かけ離れた物になってしまいます。このため、本来の品質を損なわずに生産性を高めていく事を考え、2~3年ごとに鶏舎を建て替えたり、増改築をするという形で創意工夫を重ね、エサも同様に運動量のこと、地域にこだわった内容の物を作り、平成10年3月に独自の生産様式が仕上がりました。この土佐ジロー型生産様式は、床に板張りの止まり木スペース8㎡、土の上での放飼場10㎡に60羽の鶏を入れて肥育する方式で、肉質、生産性共に納得いくものになりました。


【土の上での放し飼いへのこだわり】

では、なぜ土の上での放し飼いにこだわるのかという事になりますが、取組み当初は、田舎の特産品で、昔ながらの庭先養鶏のイメージで始まり、特に土との関わりの中で、卵や肉の品質にどんな影響があるのかということは、誰も知らない状態だったと思います。この話をする時に私たちの見解には、長年の観察と頼りない数字を示すだけで、学術的根拠の無いことをお断りして、土佐ジローの放し飼いの事をお話しします。

まず、卵ですが、理想的には60羽の集団で寝泊まりスペース16㎡、土の放飼場が100㎡くらいで雌20羽に雄1羽の導入で、ほぼ100%有精卵ができると思います。殻が固く、味は濃厚な生命力のある卵だと思います。

実際に、アレルギー体質の子どもが病院で医師に卵を止められたのですが、母親が不憫に思い、土佐ジローの加工菓子のかけらを食べさせたそうです。その半年後、3歳になった子どもが卵かけご飯を食べているとの電話を受けて、大変うれしく思ったことでした。ただ、土佐ジローの卵に限るということでした。それと、アレルギーの症状は人により異なりますので、土佐ジローの卵が有効かどうかは、言及できません。肉の生産を始めて思ったことの中に、卵にも通じる部分もあるのではないかとも思っています。

土との関わりの中で、土佐ジローは他の日本の改良された鶏と違い、改良という点では初歩的な掛け合わせでした。このため、地鶏本来の土を食べるという習性が残っていたこと、系統による鶏の性質と、この放し飼いという生産様式がうまく合致したことによって高い品質が作り出せたと思います。


【土の上での放し飼いの効果】

この環境で、大きく2つの効果があると思いました。一つは、免疫性や自然治癒力が高くなることです。長年行ってきた鶏舎の増改築の過程で、落ちた3cmくらいの釘を誤飲した場合、それを体外へ出そうとする力が働きます。私たちは自分で肉の加工処理をしていますので、その筋胃から体外へ出るまでの過程が見えます。ササミやムネ肉を直撃しますと、瀕死の状態になりますが、そこをかわすと、異物をしっかり体外へ出してきれいな体になります。この力には大変、驚きました。

それと、足の裏のマメですが、ブロイラーのマメはほとんど、すり傷から化膿して黒くなります。土佐ジローは、当初、体重も軽いので、そんなことはないと思っていましたら、増産をしていく過程で作業が追いつかなくなって、土の上に出すタイミングが2ヶ月あまり遅れてしまったことがありました。そのとき、まだ小さな体のマメが黒く化膿してしまいました。土や石を踏んで足がきれいになるのでしょうか。私は、最初に体内に入った細菌を少ないうちにきちんと抵抗できることがきれいな足になるのではないか、それには土に含まれるミネラル分や、微量要素がなんらかの働きをしているのだろう、それらの成分と体の働きによる化学反応のようなもので、抵抗力や自然治癒力が高まると考えています。

もう一つは、肉を高く評価してもらっている根拠となるうまみ成分です。私どもでは、タンパク質と脂質の量とアミノ酸の量を調べました。うまみ成分の代表格であるグルタミン酸を例にとると、一般的な鶏肉との比較で、100g当たり1000㎎の差を見たときに、通常のエサの違いだけでこの数字が出るだろうか。養鶏家としては、素人のような我々の取り組みの中で、この数字は与えるエサの成分プラスアルファの働きがあるように思えてなりません。ミネラルの摂取と、アミノ酸の量に関連があるように思いました。

それと鶏の健康状態にも深い関連性があると思われます。平成10年の生産様式に辿り着いた時も、もっと大きくさせるためにエサを工夫してどんどん与えましたところ、150日令になったころにエサ袋いっぱいの土を食べたんです。自分たちで処理をしながら何でかなと疑問に思ったことでした。

そのころ、隣の村でも若鶏の雄を少し生産している人がいて、私どもの処理場でと畜解体をしていたのですが、ある時持ってきた鶏をさばいていると、2~3羽やった時点で、手もまな板も包丁もぬるぬるして危なくてしょうがなく、洗剤で洗わなくては作業ができなくなってしまいました。うちの鶏肉とのあまりの違いに生産者に質問しました。雛は当然同じものですので、エサの内容や環境などいろいろと聞いていくうちに、実は近所から苦情が出て、土の上での放飼ができなかったことを聞き、そのことが私どもの飼育環境との一番の違いだと思いました。見た目には、そんなに脂が付いているようには見えなかったのですが、手についてヌルヌルする脂の質の違いを感じた時に、うちの土佐ジローが土を腹一杯食べたことは、人間の都合を押し付けようとしたときに、鶏の体が悲鳴をあげて人間でいう生活習慣病のような状態になったのではないか。土をいっぱい食べてミネラルなどを摂取することで自分の健康状態を改善しようとしたのではないか、というふうに私は理解をしました。それ以来、これ以上人間の都合を押し付けてしまっては、土佐ジロー本来の品質からかけ離れてしまい、一般的なブロイラー肉と同じものになってしまう気がして、鶏の都合と人間の都合の折り合い点はここにあると感じました。そして、土を食べる習慣を持った土佐ジローには、この生産様式が最適の形であると確信しました。


【おわりに】

衛生管理の面でも、感染源の究明はとても大事なことですが、感染の初期段階できちんと抵抗できる免疫力や体力をつけることで投薬の回数が減ったり、ミネラルなどの有効な働きにより高品質な肉や卵が生産できるのであれば、学会を通じて学術的根拠を作ってもらい、エサの内容や今後の生産環境改善の参考にしてもらえたら幸いです。


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